子どもを性暴力から守るには
子供への性暴力が社会問題になっています。
どうしたら防ぐことができるでしょうか。
難しい問題ですが
産婦人科医の立場から、ひとつ言えることがあります。
それは、正しい性教育をすることです。
性教育の世界のスタンダードは、ユネスコの「包括的セクシュアリティ教育」に沿って行われています。
日本の従来の性教育のように、生殖や避妊に関する知識を伝達する形式ではなく
健全な価値観の確立や、良好な人間関係の構築のしかた
他者の気持ちを尊重しながら自分の意志を決定し伝えるスキル
良質な情報へのアクセス方法や社会的資源の有効な利用方法など
性に係ることだけではなく、豊かに生きるために必要なスキルに関する教育です。
「包括的セクシュアリティ教育ガイダンス」から要点を引用しつつ、お話しします。
<プライベートパーツを学ぶ>
ガイダンスでは、対象年齢が5~8歳とされています。
自分の身体は自分だけのものですが
プライベートパーツとは
中でも大切な、簡単に他人に見せたり勝手に触らせたりしてはいけない部分のことです。
具体的には
口 胸 性器 おしり、
身体の内部につながり、生殖や生命にかかわる部分です。
「水着で隠れる部分」と捉えてもいいかもしれません。
「大切な部分だから、普段から丁寧にあつかおうね」
「やさしく洗ってね」
「大切な部分だから、簡単に他人に見せたり、触らせたりしてはいけないよ」
と、折あるごとに話します。
<からだの権利>
親子の間でも「プライベートパーツは勝手に触らない」という姿勢を見せましょう。
「かわいいから触っちゃう」を日常にしていると
子供は「プライベートパーツを触るのは愛情表現」とインプットされてしまいます。
そうするといざ性犯罪の対象にされそうになった時、自分を守るアラームが働かなくなってしまいます。
自分の身体のどこを、だれが、どんなふうに見たり触れたりしていいのかは
自分だけが決めることができます。
これを「からだの権利」といいます。
<嫌な触られ方をされたらどうしたらいいか>
「いやだ!」「やめて!」
と、はっきりと言いましょう。
「相手に悪い」ということは、全くありません。
人と人との良い関係は「相手を知る」ことから始まります。
相手が好きなことを知るばかりではなく、相手が嫌いなことを知るのも必要です。
お互いの好き嫌いを共有して初めて、いい人間関係が築けます。
自分をわかってもらうためにも「No」をはっきりと言いましょう。
<信頼できる大人に話す>
もしいやな触られ方をしたら、親・保護者や先生など
信頼できる大人に話しましょう。
普段から「困ったことがあったら話す大人」を決めておくといいでしょう。
もしかするといやな触り方をした人が
「遊んだだけだよ」と言うかもしれません。
でも、相手は遊びでも、こちらが嫌だったら、それはいじめと同じです。
許さなくていいのです。
あるいは
「誰かに話してはダメ」と言われるかもしれません。
でも、嫌なことを黙っていたら、また嫌なことをされてしまいます。
そうならないためにも、大人に話しましょう。