医師2年目のクリスマス
医師になってから、クリスマスもお正月もない生活をしていましたが
ちがった意味で「忘れられないクリスマスのエピソード」があります。
医師になって2年目のクリスマス・イブでした。
日常診療を終えようとしていた夕方、急患が来ました。
出血と腹痛です。
診ると、子宮外妊娠でした。
子宮外妊娠は、状態によっては薬物治療も可能なのですが
その患者さんの場合、手術が必要な状態でした。
すぐにご主人を呼んで説明し、慌ただしく緊急手術の準備です。
お聞きしたらご結婚されたばかりで、初めてのクリスマスだとか。
心が痛みました。
手術室に入って準備する間、今にも泣き出しそうな患者さんに、声をかけました。
「怖いですよね。でも、もうすぐ麻酔がかかって眠ってしまうし
手術は眠っている間に終わりますよ」
そうしたら、患者さんが
「先生、ごめんなさい。折角クリスマスなのに、夜まで手術なんて」
とおっしゃったのです。
新婚さんで、初めての妊娠がこんなことになってしまったのに
つらくて、怖くて仕方がないはずなのに
ご自分のことではなく、医者のことを気にかけて下さるなんて。
人としての器の大きさに、ただ感動しました。
30年近くたったのに、今だに忘れることができない言葉です。