オンライン診療での緊急避妊ピル取り扱い指針に異議
オンライン診療は原則初診不可で、再診のみの診療が現状ですが
例外として緊急避妊ピルが認められる方向で議論が進んでいます。
オンライン診療で初診でも緊急避妊ピルが処方可能になれば
時間的制約や心理的負担、地理的条件で産婦人科を受診できない女性の助けになり
望まない妊娠を防ぎ、年間16万件ある人工妊娠中絶を減らすことが期待できます。
現在、厚労省の検討会で指針が議論されていますが
現場の産婦人科医として、到底容認できない内容です。
1 対象者は「近くに医療機関がない場合、受診に心理的な障壁がある場合」に限る。
オンライン診療を受ける前に、性犯罪被害者支援センターや女性健康相談窓口等に連絡して
オンライン診療を利用できるかどうか医師に判断してもらう必要がある。
当初は「性犯罪被害者に限る」としていましたから、まだましになりましたが
これでは「心理的な障壁があるかどうか」を問診しないとなりません。
心理的に障壁がある女性に、敢えてその理由を言わせるのは
あまりに酷でしょう。
2 薬剤を送るのは禁止で処方箋が送られ、調剤薬局へ出向いて薬剤師の目の前でのむ
他のお客さんもいる前で当該女性だけ薬剤師の目の前で内服なんてしたら
当然目立ちます。
心理的に障壁がある女性に、何故そんなことをさせるのか。
また、地域の薬局は顔見知りであふれています。
前職都内の駅前薬局ではママ友さんたちが談笑していましたし
母校のある香川県木田郡三木町は、そこいら中医大生だらけです。
そんな中で、一人だけ薬のませたら、さらし者になってしまいます。
それに、近くに医療機関がない地域の薬局が
緊急避妊ピルを置いているんでしょうか。
日本には島ごと産婦人科がない島もあります。
甚だしい「机上の空論」です。
3 3週間後の産婦人科受診を約束させる
心理的に障壁があって受診できないからオンライン診療にする女性に受診を約束させる、って・・・。
完全に矛盾しています。
自分で妊娠検査薬やれば済む話ですし
国際産婦人科連合では「医師によるスクリーニングや評価は不要」としています。
日本だけ医師による評価が必要というのなら、合理的な説明をすべきです。
4 検討会の構成員12人中11人が男性
・・・初めから、当事者不在なわけで。
緊急避妊ピルは、世界76か国でドラッグストアで購入できます。
転売や乱用など、ハードルを下げることによって起こり得る
緊急避妊ピルの悪用を防ぎたい、という意見は一理ありますが
私たち産婦人科医の仕事は、女性の心身の健康を守ることです。
一部の悪用者の存在を恐れて、本当に必要な人に薬が行きわたらないのでは
本末転倒ではないかと思うのです。