大人にきびの話
今日は、患者さんに聞かれたので このお話を。 <大人にきびとは?> 医学的には「思春期後ざ瘡」といいます。 大人になって初めてにきびができたり、思春期からのにきびが持続していることを指します。 基本的に思春期のにきびと同じですが、年齢とともに生活環境や肌質の状態が変わってくるので 対処法も大人にきびにより適した方法が必要です。 <原因とメカニズム> メカニズム にきびは、毛穴に皮脂が詰まって炎症を起こしたものです。 原因 1 ストレス:ストレスを受けると交感神経が優位な状態になり、男性ホルモン(アンドロゲン)とノルアドレナリ が分泌されます。これらにより、まず皮膚が角化します。角化が起こると皮膚が硬くなり、毛穴に角栓が詰ま りやすくなります。また、皮脂分泌も増加しますので、にきびになりやすくなります。 2 ホルモンバランスの乱れ:例えば月経不順の時などに起きます。男性ホルモンは皮脂分泌促進作用、女性ホルモン (エストロゲン)には皮脂分泌抑制作用と保水力を維持する作用があります。両者のバランスが崩れると、にき びを含む肌トラブルの原因になります。 3 睡眠不足:皮膚細胞の分裂・再生は睡眠中に起こります。この過程は成長ホルモンにより促進されますが、1日うち で最も成長ホルモンが分泌されるのが寝入りばなです。つまり、睡眠不足により成長ホルモンの分泌が不充分 だと、皮膚の再生が起こりにくくなるのです。 4 細菌の繁殖:ニキビの原因菌はアクネ菌という常在菌で、普段は病原性がありません。しかしアクネ菌は皮脂を好 み酸素を嫌うので、毛穴と皮脂に繁殖しやすい性質があります。 5 よごれや汗:ほこりを浴びたり汗をかいた後に充分に洗浄しない、メイクをしっかり落とさない、洗顔料の洗い流 しが不充分なことなどが、毛穴のつまりの原因になります。 6 乾燥肌:角質層の水分が失われると、肌のバリア機能が低下します。バリア機能の低下を察知すると、皮膚は皮脂 分泌を増加させ、皮脂の膜が厚くなり、にきびになります。
<どのような診療ができるか> 基本的に一般のにきび診療と同じです。 ニキビの状態を診察する: 色、部位、肌質、年齢など 生活習慣を問診し、対策を提案する: 月経、睡眠、ストレス、食事内容、働き方など 薬を選ぶ: 他の皮膚疾患と同様、内服と外用が基本 必要に応じ面皰圧出: にきびの表面に小さな穴をあけて、にきびの中身を絞り出します。毛穴につまった皮脂や細菌などをきれいにする ことによって炎症が軽減し、にきびが早く治ることが期待できます。自分でにきびをつぶす行為との違いは、医療 機関では非常に小さな穴をあけるので皮膚に対するダメージが少ないこと、滅菌器具で行い充分に消毒するので感 染しにくいことです。 <大人にきびを予防するには> 思春期のにきびとの違いは、乾燥肌やターンオーバーの低下です。したがって対策もこれに応じたもので、保湿と皮膚 へのダメージを防ぐケアになります。 乾燥肌対策としては、洗顔をしすぎない(1日2回洗顔する場合、1回はぬるま湯でよい)、洗顔料を充分に流す、熱すぎ るお湯を使わない、洗顔後はすぐに保湿する、皮膚の保水力を高めるビタミン類を多く摂る、などです。皮膚へのダメ ージ防ぐには、紫外線対策をしっかりとする、睡眠を充分にとりストレスマネージメントをする、などです。睡眠時間 が充分に取れない場合は、次善の策として睡眠の質を上げる、つまりぐっすりと眠れる工夫をしましょう。