平成30年を迎えて
専門医になった頃から、「こういう医療がやりたい」というものがありました。
それが「全人的医療」です。
これは、症状や検査結果だけをみて治療するのではなく
患者さんの心理・社会的背景も考慮して治療をしていくものです。
生理不順の患者さんを例に挙げてみましょう。
生理不順は、軽ければ様子見でよいし、重ければ治療が必要です。
軽い重いの判断は、目安として無月経が3か月以上持続しているかどうかです。
しかし、「3か月無月経だから即治療」ということはしません。
同じ「3か月の無月経」という現象でも、患者さんによって捉え方が違います。
非常に心配している方もいれば、もうちょっと自然に戻るの待ちたいな、という方もいます。
薬はなるべく使いたくない、という方もいれば
使えるものは何でも使って治療したい、という方もいます。
早く妊娠したいという方もいれば、もうお子さんは望まないという方もいます。
つまり、一人ひとりのニーズが、患者さんによって全く違うのです。
これを正確につかむのが、心身医療者の技術です。
それには患者さんが正直に気持ちを話してくれるような雰囲気が必要だし
患者さんの心を察する敏感さも必要で、
常に感性を研ぎ澄ましていなくてはなりません。
簡単には培えない修練を要するので、日々勉強また勉強です。
そして、患者さんのニーズをつかんで治療が奏功し、
患者さんが笑顔で帰って行かれる姿を見る喜びは、何ものにも代えがたいものです。
健康や病気は、身体的要因だけではなく、
心理的・社会的要因の総合的な結果として現れます。
これが全人的医療であり、私のやりたい医療ですが
自分の思うような医療をするには自分のクリニックを持つのが一番近道になります。
全人的医療の提唱者であるM.Balint先生(遥か憧れの対象ですが)も要職を離れて開業されていることからも
やっぱり開業してよかったのかな、と思っています。
平成30年が、皆様にとって佳い一年となりますよう。